第3章 法人

民法33条:法人の成立をわかりやすく解説【法人は,自然人の集合体】

2021年3月27日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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今回は民法33条を3分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています

 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

民法 第33条【法人の成立等】

 

条文の性格

民法は、私たちの個人間の権利や義務の関係を規律する役割を持った法律です。

与えられた権利を使ったり、義務を果たしたりは、主に人間が行うことを想定されています。

「権利を使うぞー」とか「義務を果たさなきゃ」のような意思が各人の頭の中で形成されることで権利行使や義務履行がされます

その辺の石ころに、「欲しい」と言えば現金が貰える権利が有ったとしても、石ころには意志が無いので、権利が行使されることはないでしょう。

つまり、民法が権利や義務を与える対象は、意思を持つ存在を想定しているのです。

ところが、現実世界では人間以外にも意思を持って活動する存在があります

それが、人の集合体です。

人の集合体、一般社会では「組織」と言われますが、組織のような人の集合体は、その構成員の個々の感情とは別に組織としての意思を持つことがあります。

社会人の方なら、会社員として会社組織の一員である人も多いと思いますが、次のような経験があるのではないでしょうか?

人手が足りないのに、お給料が安くて労働環境を改善しないから更に人が辞める悪循環…社員はみんな同じことを思っているのに、会社は一向に改善しようとしない…。

これも、個人である人間の個々の意思と会社組織の意思が違い例です。

以上のように、人の集合体というのはその組織が一種の生き物のような存在となりえます。 とりわけ、会社のような経済活動を行う人の集合体である会社は、その意思が実社会に強い影響を与えます。

そのような存在が民法上の権利や義務の行使が出来ないとなると世の中が非常に不便になってしまいます。

ここで民法34条の出番です。

民法34条は、会社という組織に対しては、唯一人間以外に意思能力を認め、法律行為の権利能力を授けることとしました

 

条文の能力

法人は、人間以外で唯一の法律行為を認められた存在

性格の章でも述べたとおり、34条は会社という組織に、法律行為を行うチカラを授ける役割を担っています。

より正確に言うと34条は、法律が定めた規定や手続き(登記とか)を満たした会社組織に対してだけ、法律行為を行う権利能力を認めます

そして、この法律行為を行う権利能力を認められた会社組織を法人と言います。

対して、本来の民法のメインである私たち人間のことを自然人と言います。

法人は、自然人以外に唯一その法律行為を行うことを許された特別な存在です。

本来は民法などの法律行為を行えるのは人間オンリーな訳ですから、人間以外に法律行為を行う能力を認めるには厳しい基準をクリアする必要があるわけです。

人が集まって、組織活動をしていれば勝手に法人になっている…なんてことは絶対にありません。

 

権利能力なき社団

前述のとおり、法人は民法などの法律の規定や手順を満たした組織が、登記などによって初めて特別に認められる存在です。

ここで反対解釈すると、法律の規定や手順を満たしていない組織は、どんなに組織として活動していても法人ではありません

組織として活動をしていても法人ではない組織の例は、大学のサークルや同窓会や子供会や町内会のような存在です。

これらのように、実態は組織として活動しているのに法人として認められていない(法律の規定上、法人になれない)組織のことを権利能力なき社団と言います。

権利能力なき社団は権利能力を持っていないので、権利や義務の主体にはなれません。

例えば、契約などする際も権利能力なき社団名義では原則できないため代表者名義で行なったり、団体名義でも財産を保有する権利も無いので、団体の財産は構成員の総有に供するとされています。

ただ、法人では無いですが、実社会では法人のように扱う方が都合が良かったりするので、可能な限り法人に近い運用がされたりします。

 

権利能力なき社団といえるには

人が集まればそれが全て権利能力なき社団になれるわけではありません

例えば、今日この日に東京ディズニーシーに来場している人たちは、テーマパーク内に同じ時・空間に集団として存在していますが、組織とは言えず、この人の集合体は権利能力なき社団ではありません。(法人ではないのは当たり前ですよね)

では、権利能力なき社団として認められるにはどのような人間の集合体なら良いのでしょうか?

この疑問には最高裁が判例で以下の4つの成立要件を示しています。

  1. 団体としての組織を備えていること
  2. 多数決の原則が行われていること
  3. 構成員が変更されたり入れ替わっても、団体が存続すること
  4. 代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること

大学のサークルは以上の4要件を満たしているケースが多いと思います。

前述の、今日この日に東京ディズニーシーに来場した人たちは、多数決はしないし、代表もいないので権利能力なき社団としての要件を満たしていないことは最高裁の示した要件からも明らかですね。

 

コメント

超勝手な想像ですが、「法人」という熟語は「法が認めたヒト」から由来しているんじゃないかと思っています。

人間の集合体という存在を、法があたかもヒトとして擬人化したのが「法人」というわけです。

この私の、人間の集合体を擬人化してヒト認識しようとしている説は、「法人格」という単語の存在が裏付けています。

法人格とは、法が権利義務の主体として認めた法人の人格のことです。

完全に「人格」とついているあたり、民法34条は人間の集合体を新たな人格を持った存在へ昇華しようとしているクリエイターなんだと思います。

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