民法353条や,テキストを見ると『動産質の質物の占有を奪われたら,占有回収の訴えによってのみ,回復できる』みたいなことが書いてあります。
これの意味って,条文に書いてあるとおりでいいの?
本記事は,以上のような疑問の解説をしています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログ管理人の伊藤かずまが記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
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読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:動産質権の場合,本権の訴えでは占有回収できない,という意味
占有を奪われた場合,物権は基本的に,以下のどちらかの請求によって占有を回復できます。
- 本権の訴え
- 占有回収の訴え
動産質は,質権者が質権を保有していることを対抗するために,『質物を占有し続けること』を課しています。
占有を奪われると,動産質権を保有していることを他人に主張できません。
つまり,占有を失うと「その物は私の質物なので返してください」と,主張できなくなるということです。
そのため,占有を失った時点で,他人に質権を主張することはできず,占有を回復するには占有回収の訴えに頼る必要があることを,353条により定められています。
解説:353条は,動産質権においては,本権の訴えを封印している
本来,物権は,占有を奪われた場合には,以下の2通りの占有回復手段があります。
- 本権の訴え
- 占有回収の訴え
本権とは,占有を正当化ならしめる権利で,具体的には所有権・質権・賃借権などのことです。
たとえば,読者の方が自分の所有物である民法テキストを,見ず知らずの人が持っていたら,「それ,私の物(それは私に所有権があるの)だから返してください」と,所有権に基づいて占有を回復できます。
これが本権の訴えです。
または「それ,さっきまで私が持ってましたよね? 返してください」という,占有権を侵害されたことに対する占有回復の要求をすることもできます。
これが占有回収の訴えです。
このように,占有を奪われた場合には,本権の訴えか,占有回収の訴えかの,2通りの対抗策が存在します。
ところが,動産質権においては,質物を占有し続けなければ,自分が質権という物権を保有していることを他人に主張できません。(民法352条)
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
民法352条
よって,動産質における質物は,他人に奪われた瞬間に,「その質物について,私は質権を持っているから返してください」とは言えなくなるのです。
なぜなら,占有を継続していないため,質権を保有していることを他人に主張できないのですから,本権の訴えをするために必要な質権(本権)が無いものとして扱われるからです。
よって,動産質においては,占有を奪われた場合には,本権の訴えではなく,占有回収の訴えによってのみ,占有回復ができる旨を353条が定めているのです。
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
民法352条
以上が,パッと見の初見では何を言っているのかよくわからない353条の趣旨でした。
読者の皆様は,質権を利用するときが来たら,質物は誰にも奪われないように厳重に保管しましょう。
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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