今回は民法31条を3分でわかりやすく解説します。
※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています
前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
民法 第31条【失踪の宣告の効力】
条文の性格
ひとつ前の条文である30条と手を取り合って協力するのがこの31条です。
30条は、請求に基づいて、一定期間行方不明の人を失踪者と宣告するのが役割でした。
30条は、あくまで失踪者と宣告するだけであり、実際に失踪宣告された者を法律上死亡させるのは、この31条です。
人を法律上死亡させるという、非常に強力な効果を持っているあたり、死を司る死神のような存在です。
31条が死の宣告をできる相手を特定する31条は死神の使い魔といった関係性でしょうか。
条文の能力
30条が失踪者ラベリングをし、31条が法律上死亡させる
失踪宣告された者を法律上死亡したとする制度は30条と31条が協力し合って行われます。
30条は、請求と一定期間の行方不明状態の継続という要件が満たされた人を失踪者として認定し、31条の法律上の死亡効果が適用可能状態にする流れです。
31条が、実際に失踪者を「ある特定の時点」で死亡させます。
31条のポイントは「いつ死亡したことになるのか」
30条と31条の連携はそんなに難しいことはないと思います。
大事な点で試験に問われやすい点は、失踪宣告された行方不明者はいつ死亡したことにするのか?です。
31条は、普通失踪と特別失踪の場合で分け、それぞれの場合で死亡を認めるタイミングを定めています。
死亡タイミングは31条の条文を少し変換してみるとすぐわかります。
前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
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~民法 31条 読み替え~
30条1項の規定の普通失踪宣告を受けた者は行方不明になってから7年経過が満了した時に、30条2項の規定の特別失踪宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
以上の変換を元に、読み解いていきましょう。
普通失踪は7年経過した時に死亡
普通失踪の場合は、死後に生存が確認された時を起算点として、7年が経った時が死亡タイミングとみなされます。
行方不明になった直後が死亡タイミングでは無いのは、もしそこを死亡日とすると、相続も7年前の親族関係を基準とし、今現在の親族は相続できず、7年前に親族状態だった人と相続をするなど、状況と大きく離れた相続を行う必要があり、私たちの常識的理解とズレることになります。
そのため、民法は普通失踪は7年という決して短くない期間が経過してしまっているため、7年が経過した時を死亡タイミングとし、「今現在」と「失踪者の死亡タイミング」が近くなるようにしているのです。
特別失踪は危難が去った時に死亡
一方で、特別失踪は行方不明者が行方不明になった原因となる危難が去った時が死亡タイミングとみなされます。
行方不明とはいえ危難により死亡している可能性は高いこと、危難から1年という普通失踪よりも短い期間の経過で失踪宣告がされることから、特別失踪は1年が経過した時ではなく危難が去った時が死亡タイミングです。
もちろん、1年経過したタイミングを死亡としてもよかったのかもしれませんが、特別失踪はほぼ間違いなく危難で亡くなっていると予想されるため、危難によって亡くなったであろうという事実に近いタイミングを死亡タイミングにしたと思われます。
コメント
名探偵コナンのアニメで、今回の失踪宣告による死亡を題材とした事件があるのをご存知でしょうか?
アニメ第80話の『放浪画家殺人事件』です。
失踪宣告によって死亡した人の財産を相続したことで、遺産を手に入れたは良いものの、失踪宣告された人が実は生きていて…というストーリーです。
アニメの中で、コナン君が非常にわかりやすく、約15秒くらいで失踪宣告制度と普通失踪・特別失踪(アニメの中では危難失踪と言っています)についてめちゃくちゃわかりやすく神説明しています。
是非一度観てみることをオススメします。