第7章 時効

民法の中でも異質な存在である時効制度は,なぜ存在するのか

2022年3月27日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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本記事は,民法の時効の存在理由と,その異質さ,民法の中での時効がどのように構成されているかについて,解説しています。

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※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

結論:時効の存在の正当化理由は3つ

時効の存在を肯定する理由は以下3つと言われています。

  1. 一定の状態が継続した事実の尊重
  2. 訴訟上の証拠収集の困難化
  3. 権利の上に眠る者は保護しない

また,(取得)時効は,その反射的効果で,誰かが所有権を失うことになるため,民法は時効が可能な限り効果が発動しないように条文たちが構成されています。(例:時効の完成猶予・更新・時効の援用)

解説:時効は他人の権利を失わせる点で,異質な存在

民法の時効は,取得時効であれ,消滅時効であれ,誰が権利を失うことになる制度です。

基本的に民法は,誰かの権利を保護したり,期待を保護したりと,保護してあげよう・護ってあげようとするスタンスで構築されています。

ところが,時効は,取得時効が成立すれば,その反射的効果によって誰かがその所有権を失います。 また,消滅時効が成立すれば,本来行使できるはずの権利が行使できなくなります。

以上のように,一定の期間の経過を原因として,所有権をはじめとする様々な権利を奪う制度である点で,時効他の規定とは違う異質な存在です。

では,なぜこのような時効の制度が許されているのでしょうか?

その理由は以下の3点と言われています。

  • 一定の状態が継続した事実の尊重(ずっとそうだったんだからもういいじゃん)
  • 訴訟上の証拠収集の困難化(証拠揃えるの大変じゃん)
  • 権利の上に眠る者は保護しない(放置してた落ち度があるじゃん)

たしかに,どれも時効を正当化する方向に力を働きかけるものではあります。

しかし,それでも,以上の3つの理由で,権利(特に取得時効における反射的効果の所有権消滅)を本来の権利者から失わせることを,万人に説得できるかと言われると疑問が残ります

実際に,時効の存在についてはよく語られることがあります。

現に民法も,時効についてはやや消極的に考えているように見受けられます

その根拠は,民法典の中における時効の建て付けです。

民法は,時効の制度自体は認めつつも,可能な限り時効の効果が発動しないように設計しているのです。

具体的には,時効の援用(民法145条)や,時効の完成猶予と更新(民法147条~160条)の存在です。

民法の時効分野の総則のほぼ全ては,上記の時効の援用・時効の完成猶予と更新です。

時効の援用は,時の経過のみでは時効の効果は発動せず,援用という時効の利益の恩恵を受けることの表明がなければ,時効は効力を発揮させない制限的規定です。

時効の完成猶予及び更新は,時効の完成によって不利益を被る側が,時効の完成を先延ばす・阻止する,同じく時効の効力を発揮させない制限的規定です。

つまり,民法は時効の存在は認め,かつ採用しつつも,総則においてはほぼ全ての規定で,時効が効果発動しないようにするルールを詰め込んでいるのです。

以上のことから,民法典が時効に消極的である姿勢が見て取れます。

テキストで単純に知識を頭に入れていくよりも,民法典や条文たちから,制度がどのように構築されているのかの視点を持って学習をすると,より勉強が捗ります。

参考文献

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