本記事は,民法の時効の概念と,刑事事件の時効との違いを解説しています。
※赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:民法の時効と刑事事件の時効は全く別の制度
民法の時効は,一定の財産権について,物の占有や権利を行使しない状態が,一定期間継続した場合に,その状態に則した新しい権利関係を形成する制度のことです。
刑事事件の時効は,犯罪の結果発生から公訴提起までの期間制限を設け,この期間中に公訴できなければ,刑事裁判を開始できない(犯人が刑罰を科されない)とする制度です。
解説:民法の時効が持つ『消滅』の側面
世間一般的に「時効」というと,犯罪をしてからの一定期間,犯人が警察機関に捕まらなければ罪に問われなくなるという,刑事事件の時効の方の制度をイメージされることが多いです。
一方の,民法の時効は,刑事事件の時効とは違う制度です。
民法の時効は,以下の2つが存在しています。
- 取得時効:一定期間,とある物を占有(自分の支配下に置いていたり)していた場合に,その物の所有権を手に入れる制度
- 消滅時効:一定期間,権利を行使しなければ,その権利を行使することができなくなる制度
上記のとおり,民法と刑事事件の時効は全く違うものですが,時の経過によって一定の法律効果が発動する,という点では共通点があります。
ちなみに,取得時効・消滅時効と名を冠していますが,取得時効の裏には『消滅』の側面もあります。
取得時効の成立要件を満たしたことで,ある物の所有権を取得した場合,その反射的効果として,その物を元々所有していた真実の所有者が,所有権を失う(所有者の消滅が発生する)こととなります。
また,取得時効による所有権の取得は,所有権を失った人から譲渡される承継取得ではなく,前主は一切関係なく所有権を取得する原始取得です。 最後まで読んでくださりありがとうございました。