第4節 住所

民法22条:住所とは?【民法世界に”住所”の概念を持ち込んだ革命家】

2021年3月21日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
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今回は民法条を3分でわかりやすく解説します。

※当シリーズは条文が持つ効力を個性として捉えた表現で解説しています

各人の生活の本拠をその者の住所とする。

民法 第22条【住所】

 

条文の性格

現実世界から、民法という世界に「住所」という概念を持ち込んだ条文です。

この条文に対し、なんとなく遣唐使みたいなイメージを自分は持っていました。

でも、遣唐使は時代が古すぎてイマイチイメージが湧かないので、最近はドイツから憲法を日本に持って来た伊藤博文の方がイメージしやすいかな?って思います。

歴史上の偉人達って、当時の最先端の技術を日本へ持ち帰るため、海外に留学しているケースが多いです。

この条文も、現実世界から民法世界に「住所」という概念を持ち込んでいるため、実在の人間としたら、きっと若くして優秀だったんだろうなぁ…と思います。

 

条文の能力

なぜわざわざ22条があるのか

今の生活拠点がその人の住所とするのが原則、というのが22条の定めるところです。

当たり前すぎて、「なんでわざわざ民法22条なんてあるん?」「ていうか、住民票の住所が自分の住所じゃないん?」と思うかもしれません。

もちろん理由がありまして、他の民法条文や他の法律で、住所を基準としてルールを定めているものがあるのです

そのため、現実世界の住民票や本籍などといった登録上の住所とは別に、キチンと民法上の住所という概念を定めておく必要があるのです。

例えば、行政事件訴訟法や民事訴訟法では、原則として訴訟を起こす際は被告(訴えられる側)の住所を管轄する裁判所に訴えを出訴する、というルールがあります。

ここで、以下のcaseを見てみましょう。

~ Case ~
北海道大学に通う札幌市在住の大学4年生Aさんは、知人Bから「貸した20万円いい加減に返せ!」と、民事訴訟を訴えられてしまった。

大学生Aさんは沖縄県出身で、住民票は実家の沖縄県那覇市のままにしていた。

以上のcaseの場合、もし仮に住民票の住所がAさんの住所とする場合、裁判は沖縄県那覇市の那覇地方裁判所でする必要があります。

なので、AさんもBさんも開廷日の度に北海道から大移動しないといけません。

弁護士をつける場合、北海道と沖縄のどっちの弁護士に頼むかも考えなければなりません。

Bさんも「訴えたら交通費だけで赤字だわ…」と出訴を諦めて泣き寝入りしてしまうかもしれません。

裁判所からしても、次回開廷日の調整等に支障をきたす恐れがあります。

上記は円滑な司法制度を行う上で好ましくありません。

そのため、民法としては民法としての住所を明確に定めようとしたのが、この民法22条なわけです

22条には「生活の本拠がその者の住所とする」とありますので、caseの場合、北海道大学に4年間通っているAさんは生活の本拠は札幌市と言えるでしょう。

そのため、Bさんは札幌地方裁判所に訴えれば良いということになります。

Bさんからしても、札幌市にいるAさんを訴えるのに札幌地方裁判所なのは、予想のつくところでしょう。

 

コメント

「無戸籍児童問題」というのを聞いたことがありますでしょうか?

これを書いている2021年3月現在、民法733条の女性の再婚禁止期間の撤廃に関する法令の改正試案が出されたことで特に話題になりました。

無戸籍児童とは、出生したにも関わらず、国に出生届が出されなかったが故に、当人に戸籍が無い問題です。

国がその存在を認識できないので、正確な無戸籍者の数はわからないですが、戸籍が無い故にあらゆる福祉制度・セーフティネットの恩恵が受けられないという障害を発生させるとして、社会問題になっています。

戸籍が無いと、パスポートも取れない、免許も取れない、高校に進学できない、とあらゆる自由に制限がかかります。

戸籍が無い以上、住民票登録も無いので、現実世界では住所はありません、というかその人は存在すらしていない扱いです。

ただ、民法22条の主語は「各人」になっていますので、無戸籍だろうが民法上は住所が認められる可能性があるわけです。

だからと言って22条にできることも少ないのが現実です。

民法733条改正も決定打ではないでしょう。

最終的には、無戸籍者が発生しないよう、出生届は必ず提出するよう私たち全員が心掛けていきたいですね。

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