コラム

なぜ分割会社になれるのは,株式会社又は合同会社だけなのか

2022年3月20日

伊藤かずま

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国際行政書士(第21190957号)
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本記事は,分割会社になれるのが,なぜ株式会社又は合同会社に限定されているのか,について解説しています。

赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です

太文字は,解説中で大切なポイントです

※本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

結論:株式会社又は合同会社には,無限責任社員がいないため

理由は,株式会社又は合同会社には,無限責任社員がいないからです。

共に無限責任社員がいる合資会社又は合名会社が,分割会社になれることを許すと,会社分割制度を利用した無限責任回避が可能となってしまうため。

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解説:無限責任社員の意図的な責任範囲縮小を防ぐことが目的

会社分割とは,1個の会社(分割会社)を2個以上の会社(承継会社)に分割することをいいます。

そして,分割会社になれるのは株式会社又は合同会社に限られています。(会社法757条,762条1項)

会社(株式会社又は合同会社に限る。)は、吸収分割をすることができる。この場合においては、当該会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(以下この編において「吸収分割承継会社」という。)との間で、吸収分割契約を締結しなければならない。

会社法757条

一又は二以上の株式会社又は合同会社は、新設分割をすることができる。この場合においては、新設分割計画を作成しなければならない。

会社法762条1項

※本記事に関係ない部分に取り消し線を引いています。

では,なぜ分割会社になれるのは,株式会社又は合同会社に限られていて,合資会社と合名会社は分割会社になれないのでしょうか?

理由は,合資会社と合名会社には無限責任社員がいるからです。

無限責任社員は,その社員の法人の負債を,個人的・私的財産を持って弁済する義務を負っています。

つまり,合資会社と合名会社の債権者は『無限責任社員がいるから,債権の回収可能性が非常に高いだろうと期待できる』から取引や契約をしている場合が多いです。

さて,ここで会社分割をした場合の効果を定める会社法759条1項と764条1項を見てみましょう。

吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する

会社法759条1項

新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する

764条1項

つまり,承継会社は分割会社の権利義務を承継します。 これは民法でいうところの相続をイメージして頂ければOKです。

これを加味すると,もしも合資会社と合名会社が,分割会社になれるとすると,権利義務を有限責任社員しかいない合同会社である承継会社に渡してしまうことができます

義務を合同会社に渡せてしまうとすると,無限責任社員がいるから,合資会社や合名会社と取引や契約をしたり,融資をしていた債権者としては,債権回収を担保してくれる社員の義務範囲が,いきなり無限から有限になってしまうことになります。

これは,実質的に会社分割制度を悪用した,無限責任社員の責任逃れです。

このような意図的な責任範囲の縮小で,債権者が予期せぬ不利益を被らないために,分割会社になれるのは株式会社又は合同会社に限られているのです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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