占有権の分野は,占有権の性質がどうのこうのでたくさん条文を学んだのに,所有権の分野は,いきなり相隣関係とかいうマイナー条文たちが並ぶんだけど,憶える必要あるの?
そもそも,相隣関係ってなんや?
本記事は,民法209条の条文趣旨や“相隣関係”をわかりやすく解説しています。
記事の信頼性
本記事は,4ヶ月の独学で試験に一発合格した当ブログの管理人が記載しています。
現在は,現役行政書士として法律に携わる仕事をしています。
参考:独学・働きながら・4ヶ月・一発(202点)で行政書士試験に合格した勉強法
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読者さんへの前置き
※赤文字は,試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方,その他重要ポイントです
※太文字は,解説中で大切なポイントです
※本記事は,2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
条文趣旨:どうしても必要なら,必要最低限で他人の土地を使っていいよ
1 地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
民法209条 【隣地の使用請求】
土地は,基本的に他人の土地と接しています。
土地のこのような特性から,その境界線付近の障壁や建物の築造や修繕に必要な範囲ならば,隣地の土地を使用することを請求できることを定めて利害関係を調整することにしています。(本条1項)
いくら隣地を使用できると言っても,住家は隣人のプライベート空間であるため,承諾がなければ立ち入ることはできません。
当然ながら,その隣地を使用させてもらう際に,隣地に損害を与えた(木材を隣家の壁にぶつけてカベが凹んだetc…)場合は,その損害を弁償しなければいけません。(本条2項)
解説:土地は基本的に隣地と接しているため,利害関係の調整が必要
民法209条について
土地は,基本的に他人の土地と接しています。
実は,物の中で,他人の物とくっついている物って土地(マンションの区分所有)くらいしかないんです。
※物の定義はこちらで確認しておきましょう
したがって,自分の土地の境界線付近に柵を作ろうとすると,どうしても他人の土地を侵害しやすいという現実・状況が存在します。
「隣地を踏まないように柵を作ればいいんじゃね?」と思うかもしれませんが,民法207条によって,土地の所有権は上空にも及ぶので,隣地を踏まなければOKという話でもないのです。(空中でも,境界線を越えて隣地の空間に手や体がはみ出せば,理論上は不法行為です。)
そうなると,誰も境界線付近には何か建造物を作ろうとしなくなり,障壁や柵といった便利なものを設置しなくなります。
または,他人の土地を間違っても侵害しないような,自分の土地と隣地との境界からかなり内側に柵を作るようになることが予想されます。
これは,限りのある日本の土地の,使用効率をかなり悪くする事態を招きます。
そこで,民法は,土地と土地の境界線付近に障壁又は建物を,築造又は修繕するために,必要な場合は,必要最低限の程度で,隣地の使用をすることを認めたのです。
これにより,「お互い様」な受忍義務を課し,相隣関係を円滑なものにしようとしているのです。
相隣関係の存在意義
民法の所有権に関する条文は,この209条から238条まで,“相隣関係”という分野に割かれています。
実は,所有権の定義や性質自体は非常に簡単な概念なのです。
所有権の定義は,物権の定義とほぼ同じで,物を直接的・排他的に支配できる権利です。
この定義は,民法206条に定められていて,土地の場合は上空・地下にもその所有権が及ぶという特則が207条に定められています。
所有権という概念・定義についての,民法典の条文は,この2条で終わりなのです。
そして,次の(本記事で解説している)209条から,民法典は“相隣関係”に言及していくことになります。(208条は削除されています)
前提として,先ほども述べていますが,基本的には土地は他人の土地と接しています。
土地のこの特性から,隣人間とのトラブルが予想されるため,民法典は209条~238条までを割いて,相隣関係という,隣地間の調整弁的なルールを設け,利害関係の調整を図っています。
相隣関係とは,隣接不動産の機能を一部制限することで,隣人間の通行・流水・排水・境界の管理や利用を円滑にするためのルールのことです。
本記事で取り上げた民法209条も,『本来は他人が使えない自分の土地を一部使用させてあげるという制限を加えることで,隣人間の境界の管理を円滑にする』という目的を達成しようとしているのです。
このように「なぜ,相隣関係というルールが存在するのか?」に対し,
「それは,土地が基本的には隣地と接しているから,隣人間トラブルが起こりやすいので,民法が利害関係の調整をするためだよ」
という趣旨を理解することが大切です。
この“相隣関係”の趣旨を理解したうえで,民法209条~238条までの条文を眺めてみましょう。
きっとスッキリ理解できるはずです。
相隣関係の調整目的に流水・排水が入っているのは,民法が制定された時代背景があります。 当時は明治時代で,衛生的な日常生活を送るには,水の確保は非常に重要な問題だったのです。
現代において,私たちは基本的には上下水道が整備されている(蛇口ひねればきれいな水が手に入る)環境が整備されている中で生活するため,隣地間との流水・排水でトラブルになることは少ないと思います。
したがって,一部の相隣関係の条文の重要度は下がったとも言えるでしょう。
ただ,現代も第一次産業が盛んな地域において,農業に使用する水の確保は非常に重要な問題です。
よって,決して不要な条文ではないので,試験対策としてもしっかり勉強しておきましょう。
参考文献など
この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。
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