第1節 時効・総則

民法150条:催告による時効の完成猶予の効果は,なぜ重ね掛けできないのか

2022年4月7日

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
国際結婚/在留VISA/永住者/定住者/帰化は,是非お気軽にウィステリア国際行政書士事務所までご連絡ください。

事務所HPはこちら

初学者&独学&4ヶ月&一発合格(202点)で行政書士試験に合格しました。
読者さまからのコメントにあった『本当の意味での初学者にとっての解説書』を完成させるべく,本サイトを運営中。

本記事は,民法150条において,なぜ催告による時効の完成猶予は重ね掛けできないのかについて解説しています。

  • 赤文字は,行政書士・宅建・公務員試験対策として絶対に知っておくべき単語・用語・概念・考え方です
  • 太文字は,解説中で大切なポイントです
  • 本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています

結論:催告による時効の完成猶予を重ね掛けできると,実質永久に時効が完成しないから

催告による時効完成猶予効果の重ね掛けができない理由は,催告の重ね掛けを許すと,催告を繰り返すことで,実質的に未来永劫に渡って,時効の完成を阻止することが可能になってしまうため。

時効・催告・150条2項

※筆者のTwitterでは,法律のなぜ?の答えを140文字で発信しています!是非フォローしてください

解説:時効制度の趣旨を没却させないための工夫

催告をすると,6か月間の時効の完成猶予効果が発動します。 これにより,時効の完成を先延ばしにすることができます。

1 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない

2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない

民法150条
時効の完成猶予・催告

催告とは,債権者が債務者に対して,債務の義務の履行を請求することです。

電話をするとか,LINEや手紙を送るとかで,「貸してるお金返して」も立派な催告です。 実務上では,確実に催告をした証拠を残すため,内容証明郵便が用いられることが多いです。

催告することで時効の完成猶予の効果発動が認められている趣旨は,時効により権利を失う側の者時効の完成を阻止することで,権利を保護したり,債権回収の機会を確保することにあります。

そもそも,時効は,取得時効であれ消滅時効であれ,『時効が完成すると誰かが権利を失う』という側面を持つ制度です。

民法の大部分の条文が,権利の保護に努める中,権利を失わせる時効制度はかなり異質な存在です。

したがって,民法は時効という制度を認めながらも,時効の援用を要件として課し,完成猶予や更新の規定によって,可能な限り時効の効果が発動させないような仕組みを盛り込んだ民法典の構造になっています。

催告による,時効の完成猶予の規定も,時効の効果発動を阻止する手段のひとつとして民法150条1項に定められているのです。

さて,150条2項を見てみると,催告による時効の完成猶予期間中に再度催告しても,さらに6か月間の時効の完成猶予効果は発動しない旨が記載されています。

1 (略)

2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない

150条2項

この催告の重ね掛けNGルールは,以下の理由によるものです。

時効の完成猶予がされている間(図の青線の期間)は,時効が完成することがありません。

時効の完成猶予・催告

この期間中に,さらに新たな完成猶予期間を開始することを許すと,催告を繰り返し続けることで,未来永劫完成猶予期間を継続させることができてしまいます。

下図でいうところの,時効が完成しない期間である青線を,将来に向かってずっと継続できてしまうということです。

時効・催告・150条2項

たしかに,民法は時効の効果が発動しないようにたくさんのルールを定めています。

しかし,未来永劫に渡って時効の効果が発動しないというのは,民法が時効制度を採用した趣旨を没却させてしまいます

時効の効果がずっと発動しない=時効制度の意味がない,というような状況に出来ちゃうようなルールを用意するなら,そもそも時効制度なんて採用するなよ!ということです。

したがって,催告を繰り返すことで,時効の完成を実質的に不可能にさせないようにできるため,催告による時効の完成猶予期間中の新たな催告は,重ね掛けできないルールとなっているのです。

参考文献など

この記事は以下の書籍を参考にして執筆しています。 より深く理解したい方は以下の基本書を利用して勉強してみてください。 必要な知識が体系的に整理されている良著なので,とてもオススメです。

行政書士合格を目指す方必見!

筆者が,行政書士試験に,4ヶ月の独学で・仕事をしながら・202点で一発合格したノウハウや勉強法,使用書籍を無料公開しています。

特にノウハウ集は,有料note級の1万2000文字以上の情報量で大変好評なので,是非読んでみてください!

法律系資格を本気で目指す方は予備校も視野に入れましょう!

法律系資格の合格の最短&最強ルートは誰かに教えてもらうです。

最近はオンライン授業サービスを提供している予備校が多くなってきています。

スキマ時間を有効活用できるオンライン授業が,低価格で受講可能な予備校を有効活用して,自分自身のスキル習得へ賢く投資していきましょう。

資料請求や相談面談はどこも無料なので,まずは気軽に資料請求から,合格に向けて一歩踏み出しましょう。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

伊藤かずま

国際行政書士(第21190957号)
宅地建物取引士合格(未登録)
国際結婚/在留VISA/永住者/定住者/帰化は,是非お気軽にウィステリア国際行政書士事務所までご連絡ください。

事務所HPはこちら

初学者&独学&4ヶ月&一発合格(202点)で行政書士試験に合格しました。
読者さまからのコメントにあった『本当の意味での初学者にとっての解説書』を完成させるべく,本サイトを運営中。

-第1節 時効・総則
-, ,