本記事は,民法150条において,なぜ催告による時効の完成猶予は重ね掛けできないのかについて解説しています。
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- 本記事は2020年4月1日施行の民法改正に対応しています
結論:催告による時効の完成猶予を重ね掛けできると,実質永久に時効が完成しないから
催告による時効完成猶予効果の重ね掛けができない理由は,催告の重ね掛けを許すと,催告を繰り返すことで,実質的に未来永劫に渡って,時効の完成を阻止することが可能になってしまうため。

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解説:時効制度の趣旨を没却させないための工夫
催告をすると,6か月間の時効の完成猶予効果が発動します。 これにより,時効の完成を先延ばしにすることができます。
1 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
民法150条

催告とは,債権者が債務者に対して,債務の義務の履行を請求することです。
電話をするとか,LINEや手紙を送るとかで,「貸してるお金返して」も立派な催告です。 実務上では,確実に催告をした証拠を残すため,内容証明郵便が用いられることが多いです。
催告することで時効の完成猶予の効果発動が認められている趣旨は,時効により権利を失う側の者が時効の完成を阻止することで,権利を保護したり,債権回収の機会を確保することにあります。
そもそも,時効は,取得時効であれ消滅時効であれ,『時効が完成すると誰かが権利を失う』という側面を持つ制度です。
民法の大部分の条文が,権利の保護に努める中,権利を失わせる時効制度はかなり異質な存在です。
したがって,民法は時効という制度を認めながらも,時効の援用を要件として課し,完成猶予や更新の規定によって,可能な限り時効の効果が発動させないような仕組みを盛り込んだ民法典の構造になっています。
催告による,時効の完成猶予の規定も,時効の効果発動を阻止する手段のひとつとして民法150条1項に定められているのです。
さて,150条2項を見てみると,催告による時効の完成猶予期間中に再度催告しても,さらに6か月間の時効の完成猶予効果は発動しない旨が記載されています。
1 (略)
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
150条2項
この催告の重ね掛けNGルールは,以下の理由によるものです。
時効の完成猶予がされている間(図の青線の期間)は,時効が完成することがありません。

この期間中に,さらに新たな完成猶予期間を開始することを許すと,催告を繰り返し続けることで,未来永劫完成猶予期間を継続させることができてしまいます。
下図でいうところの,時効が完成しない期間である青線を,将来に向かってずっと継続できてしまうということです。

たしかに,民法は時効の効果が発動しないようにたくさんのルールを定めています。
しかし,未来永劫に渡って時効の効果が発動しないというのは,民法が時効制度を採用した趣旨を没却させてしまいます。
時効の効果がずっと発動しない=時効制度の意味がない,というような状況に出来ちゃうようなルールを用意するなら,そもそも時効制度なんて採用するなよ!ということです。
したがって,催告を繰り返すことで,時効の完成を実質的に不可能にさせないようにできるため,催告による時効の完成猶予期間中の新たな催告は,重ね掛けできないルールとなっているのです。
参考文献など
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